会社に所属しないで個人や家族で事業を営む個人事業主は収入や出費の管理を自分で行う必要があります。サラリーマンなら経費をあまり意識せずに会社に経理を任せられますが、個人事業主は経費削減のための対策をいつも考えなければいけません。この記事では個人事業主が意識すべきいくつかのポイントをご紹介します。

1.個人事業主の収入形態と経費削減

経費削減のための3ポイント

個人事業主とは企業との雇用契約を交わすことなく自身で事業を営んで収入をあげる人のことですが、1人で事業を行う場合も家族や雇用した従業員たちと複数人で働く場合も、法人でなければ個人事業主(自営業者)となります。

個人事業主の収入形態は一般のサラリーマンのそれとはだいぶ勝手が違います。個人事業主は事業の収入とプライベートの収入との境界線があまりはっきりしません。雇用会社員であれば会社からもらう給料がプライベートで使う収入になりますが、個人事業主は事業で得た利益の中から事業経費とプライベートの出費を捻出します。おおまかに図式にすると以下のようになります。

プライベートの収入=事業売上ー必要経費ー各種控除ー税金

つまり事業売上から事業に使用した通信費や交通費、税金や各種控除などを差し引いた残りのお金はプライベートの収入にできるということです。ですから事業のためにかかる必要経費を削減できればプライベートの収入はアップします。ちなみに必要経費の中には従業員給与も含まれています(青色申告しない場合は個人事業主の家族への給与は含まれない)。

経費削減できる分野

経費と一口に言っても事業には様々な出費がつきものです。また事業内容によってその事業に特有の経費も発生するでしょう。代表的な経費をいくつかあげてみましょう。

  • 文房具
  • コピー機や複合機、インク代
  • インターネットや電話代
  • ガソリン代(事業関連で移動する時)
  • 公共交通乗用具費用(バス、タクシー、電車など)
  • 従業員給与
  • ファイルやコピー用紙
  • パソコンや周辺機器
  • 水道光熱費
  • 修繕費
  • 広告宣伝費

このほかにもたくさんの経費が事業運営のために消費されますが、経営者としてはいかにこれらの経費を削減するかが大きな課題になります。とはいえ乱暴なコストカットは会社にとってプラスにはなりません。例えば従業員の費用を数%カットするといった行動は従業員離れや不信感を招くでしょう。ですから出来る分野でこつこつと節約していくことができます。

例えばファックスを使っているなら大量に紙やトナーを使いますが現在は「eファックス」という技術があり、デジタル形式で文書を保存したり送信することが可能なので、それを導入することで消耗品費用を抑えられるでしょう。また光熱費に関しては自治体などの援助を使って太陽光発電をして売電するという方法もあります。

インターネットについてはモバイルWiFiなどを使って住宅用と外出先のネット費用を一つにまとめられます。インク代は詰め替え用インクを使えますし、広告宣伝費に関しては公式HPやSNSなどのネット利用を通してコストカットにつなげられるでしょう。このように各分野において節約できる方法は色々と見つかります。コストを下げればその分収入と出費との差額が多くなり利益がアップします。

2.経費削減のための3ポイント

個人事業主の収入形態と経費削減

上記のように地道な節約努力もできますが、個人事業主は他にも経費全体を根本から削減するためにできることがあります。優秀な経営者はどれだけ売り上げを多くあげられるかという事だけでなく、どれだけ出費を下げられるかという点もよく考えます。家計と同じように給料アップのために努力することと毎月の出費を減らすこととはある意味で同義です。

売り上げはサービスや製品を購入する相手による部分が多いですが、出費については自身の努力で変えられる部分が少なくないので個人事業主は以下のようなポイントを意識することをおすすめします。

経費削減のためのポイント1:青色申告を使う

個人事業主は確定申告をする必要がありますが、確定申告には「青色申告」と「白色申告」というタイプの申告書があります。このうち青色申告では毎日の取引結果を複式簿記により帳簿に記録しなければならず、手間がかかると言われています(単式簿記の青色申告もある)。しかし青色申告をすると様々な節税効果を期待できます。例えば以下のようなメリットがあります。

  • 赤字を翌年度以降繰り越しできる
  • 一括して減価償却を経費計上できる(30万円未満の固定資産を上限300万円まで)
  • 専従者給与として家族の給与を経費にできる(上限なし)
  • 65万円の特別控除がある(10万円と55万円の控除もあり)

白色申告ではこれらのメリットがなかったり、あっても限定したメリットなので青色申告した方がベターです(2020年度から青色申告は現行の2種類から3種類になるので注意)。

経費削減のためのポイント2:中古品を買う

自宅で事業を営んでいる場合もオフィスをレンタルしている場合も、事業用品に中古品を導入するのは良いことです。新品の方が耐用年数や体裁面で良い場合もありますが、程度の良い中古品を購入することで経費削減を図ることもできます。例えばパソコンや会社携帯などは中古でも質がよくまだまだ使えるものがいろいろと見つかるでしょう。

またさきほどの青色申告の減価償却上のメリットと組み合わせて考えると、例えば新品で40万円するものを買って減価償却を少しずつするよりも、中古で28万円で購入して減価償却を一括計上するほうが税制上有利になるケースがあります。このように購入費用の削減というニュアンスでも節税というニュアンスでも中古品の利用にはメリットがあります。

ただ注意点として中古品を購入して早々に故障や破損が生じてしまった場合はむしろ余計な出費を生むことになります。ですから中古品の購入は慎重に程度や質をチェックしてから行いましょう。

経費削減のためのポイント3:必要経費を増やす

「必要経費を増やす」というのは意味もなく経費を多くするというニュアンスではありません。例えば取引先に車で行く場合に遠回りをしてガソリン代を多くかけるということではありません。そんな事をすれば事業の売上分を圧迫するだけです。そうではなく「必要経費としてすでに支払っている分」つまり事業のための必要項目として払った分をできるだけ多く計上するということです。

なぜ必要経費の計上が大切かと言うと、経費を多く計上すれば税金の課税対象がその分少なくなるからです。所得税は事業収入から経費や各種控除を差し引いた部分に対してかかります。ですから使った経費分を多く書くことで課税対象額が下がるというわけです。

例えばインターネットを事業でもプライベートでも使っているのならその一部を経費計上できます。電話代やガソリン代についても同じことが言えますし、仮に同じ業種の友人と外食を楽しんだ場合も事業に役立つ情報交換をしているのなら経費として計上できる可能性もあります。

実は経費計上に何を含めるかについてはあいまいな部分が多くあり、中にはグレーな経費計上方法もあります。経費の捏造は絶対NGですが、人によって経費ととらえるか否かで意見が分かれることもあるでしょう。いずれにしても明らかに事業と関連があるのなら漏らさず経費計上するのが鉄則です。

3 .まとめ

個人事業主にとって事業を運営するためにかかる経費や税金の計算は非常に身近なものです。事業の売り上げをアップすることも収入を増やすための基本ですが、経費を削減することも生活設計のためには不可欠な要素です。家庭でも事業場でもコツコツとコストカット対策をするとともに、紹介した制度を利用して根本的な経費削減にも取り組んでみてください。