個人事業主が毎回緊張する時期と言えば確定申告の時期かもしれません。確定申告は納税額を左右する大切なものですが、給与所得だけのサラリーマンとは異なり個人事業主は様々な計算をこの時期に行います。少しでも節税をするためにどのように確定申告するか迷っている人は多いのではないでしょうか。
この記事では確定申告時に個人事業主が使うべき青色申告の基本やメリットを解説していきたいと思います。
1.個人事業主が支払う税金と青色申告の基本
税金の支払いに関連して青色申告作業は必要になりますが、青色申告について説明する前にまずは個人事業主が支払う税金の基本について簡単に解説しておきたいと思います。
個人事業主は特定の会社に所属して給与をもらうわけではないので、端的に言えば自分で事業利益をあげて自分で出費の計算をし、自分で給料を稼ぎ出す必要があります。時間や作業量などをセルフコントロールできるので自由度が高いですが、その分人任せにはできないので責任は大きいと言えます。
個人事業主が払う税金は下の2つのタイプに大別されます。
■租税公課
■事業主貸
「租税公課」は事業自体にかかる税金のことで経費として扱えます。一方「事業主貸」とは大まかに言えば事業主個人のプライベート収入などにかかってくる税金で事業とはあまり関係がありません。この2つのタイプの税金はさらに下記のように細かく分類できます。
■租税公課
- 個人事業税
- 消費税
- 印紙税
- 固定資産税
- 自動車税
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 会費や組合費(商工会議所や各種組合など)
■事業主貸
- 所得税
- 住民税
- 国民健康保険
- 国民年金
これら以外にも関係する税金はありますが、大まかには上記のように分類できます。手取りにはならないという意味では、税金もいわば売上に対する経費のようなものです。ですから節税して経費削減を目指したいところですが、そのために個人事業主は青色申告をすることが最重要項目になってきます。
青色申告の種類
確定申告には大きく分けて白色申告と青色申告がありますが、端的に言って簡単なのは白色申告です。しかし個人事業主がより節税メリットがあるのが青色申告です。
青色申告には実は2種類あります(2020年からは3種類に改正)。現行の種類と改正後の種類をすべてまとめると以下のようになります。
- 複式簿記による帳簿記載&e-Tax による電子申告か電子帳簿保存をする方法
- 複式簿記のみ(電子申告や電子帳簿保存なし)
- 単式簿記(簡易簿記)
2番と3番は現行の2タイプですが、2020年からは1番目の条件が追加されます。このうち一番節税メリットがあるのは1番です。手間がかかる分メリットは大きくなるということです。
2.青色申告で経費削減!個人事業主が使うべきメリット
青色申告すると個人事業主は以下のようなメリットの恩恵を受けることができます。
・メリット1:儲けから最大65万円を差し引ける「青色申告特別控除」
青色申告の最大のメリットとも言えるのが特別控除です。先述の3つの青色申告のタイプのうち、複式簿記で帳簿をつけてかつe-TAXによる電子申告か電子帳簿保存をすることで65万円を儲けから控除できます。複式簿記帳簿のみで電子申告か電子帳簿保存をしない場合は55万円の控除、単式簿記での青色申告は10万円の控除となります(2020年分から)。
・メリット2:赤字繰り越しが可能
事業が軌道に乗る前や事業を拡大する時は経費が上回って赤字になることがあります。このような場合は赤字を翌年以降の3年間に発生した黒字分と相殺できます。例えば前年に赤字が100万円あって翌年が黒字150万円というケースでは150万円から100万円差し引いて50万円に対する税金だけを払えばOKです。これは白色申告ではないメリットです。
・メリット3:専従者給与の計上
基本的に家族に払う給与を経費として計上することはできませんが、青色申告の場合は税務署に届出をすれば経費にできます。ただし条件があってその事業だけで働いている事や行っている業務内容に対して適切な給料であることがポイントです。経費を多く計上しようとしてあからさまな高給を渡すのはNGです。
実は白色申告にも専従者控除がありますが最大86万円と上限があります。しかし青色専従者給与の場合は上限がないので青色申告の方が絶対的にメリットがあります。
・メリット4:少額減価償却資産の特例
10万円以上するものや耐用年数が1年以上あるもの(パソコンや車両など)は原則的に固定資産として少しずつ資産価値を減らして経費計上しなければいけません(減価償却)。まとめて一気に計上はできません。しかし青色申告をしていると、30万円未満の固定資産をその年度の経費として一括計上できます(合計限度額は300万円)。
一括計上するとお得なのは利益がたくさん出そうな事業年度の時です。この制度を使って上限いっぱいまで計上すればその経費分を課税対象から外すことが可能です。
・メリット5:貸倒引当金の繰入が可能
取引先への売掛金が相手の倒産で回収できない可能性がある場合、事業者はあらかじめ一定額を「損失」として計算できますが、この損失分を経費として計上することが可能です。あくまで可能性なので実際に倒産しなくても損失として繰入できます。計上する経費を増やすことで節税ができれば、課税額を減らせるという意味でいわば経費削減になります。
このように確定申告を青色申告で行うことで節税対策になるので、個人事業主は少し面倒でも白色ではなく青色を選ぶようにしましょう。
3 .まとめ
青色申告は白色申告よりも手間がかかりますが、その分節税対策をするには一番メリットがある申告方法です。もし税金対策が難しくてお手上げという場合は、税理士の力を借りながら青色申告のうち特別控除が65万円になる方法で確定申告をすませるようにしましょう。
個人事業主が経営を安定させるには、売り上げアップだけでなく節税による経費削減も意識する必要があります。もちろん事業で使う消耗品やOA機器などをできるだけ安く手に入れたり光熱費を減らす努力をするなどの総合的な取り組みも大切です。売り上げアップと支出ダウンの両方を目指すことで経営安定化を達成しましょう。