個人事業主にとっては事業に関係する経費削減は一生のテーマです。少しでも節税したり出費を減らすことによって従業員はもちろん自分自身の待遇もアップさせることができますし、事業運営の安定化にもつながるからです。
この記事では経費削減を達成するために、必要経費について意識すべきポイントや注意点を紹介したいと思います。
1.必要経費と税金との関係
個人事業主であれサラリーマンであれ税金を少しでも安くしてもらいたいという願いは共通しています。そのためなんとかして節税をしようとどの会社も躍起になっていますが、節税で重要なポイントは必要経費の計上です。必要経費とは会社の事業の運営のために必要な支出のことです。例えばハンバーガーショップがハンバーガーを作るためにパンを買えば、パン代は必要経費となります。
ここで必要経費と税金との関係について簡単に図式化したいと思います。
・所得税の場合
所得税額=(事業収入−必要経費−各種控除)×税率−課税控除額
・個人事業税の場合
個人事業税額=(事業収入−必要経費−各種控除−事業主控除290万円)×税率
この図式を見ると分かりますが、各種控除と必要経費が事業収入から引かれてそこに税率をかけることで税金額を算出しています。このうち必要経費の金額が大きければ大きいほど事業収入との差額が小さくなっていき、そこに税率をかけると税額は小さくなっていきます。つまり必要経費の多さと税額とは反比例の関係にあるので、税金を減らすためには多く経費計上したほうが良いです。
計上できる必要経費
事業のための必要経費として計上できるものの中には以下のようなものがあります。
- 租税公課(個人事業税、固定資産税、印紙税、不動産取得税、自動車税、自動車重量税などの税金や組合費など)
- 水道光熱費
- 移動交通費(公共交通乗用具など)
- 通信費(インターネットや電話料金、切手代やはがき代、送料など)
- 広告宣伝費
- 接待費用
- 損害保険料
- 消耗品(文房具や紙や家具、OA機器など)
- 従業員給料
- 外注費用(外注した仕事の報酬など)
- 家賃
- 貸倒金(回収できなかった売掛金や受取手形)
このようにたくさんの支出を経費として計上することができます。ちなみに最初の租税公課の部分を見ると分かりますが、税金も必要経費としてカウントできます。税金に経費のイメージはないかもしれませんが実は経費になるので注意しましょう(所得税や住民税は経費にならない)。
2.必要経費の計上方法
必要経費の計上は実は単純な話ではありません。なぜなら必要経費は個人事業主がある程度自分の裁量で決めることができるからです。極端な話、全く同じ事業経費をかけていても300万円と書く事業主もいれば250万円と書く事業主もいるでしょう。必要経費を偽造するのはNGですが、何をどれくらい必要経費とするかにはグレーな部分もあるのでこのような差が生まれます。
いずれにしても経費として算入できるものをできるだけ多くした方が税金の支払いは少なくなるので、経費計上はもれなく行う方がベターです。とはいえ何を必要経費とみなすか迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。そういう場合は「この出費は売上につながり得る(た)支出かどうか」を考えると良いです。
例えば商品を仕入れてそれを売ろうとする場合、売れれば当然必要経費ですが、仮に売れなくて廃棄になっても売れる可能性があると見込んで仕入れているわけですから必要経費とみなすことができます。取引先の接待費用についても、飲食しかしていないようでも事業繁栄のきっかけになりえるなら必要経費とみなせるでしょう。
このようにポイントは事業売上を伸ばすことに貢献しそうかどうかという点です。いずれにしても出費に関連する領収書や受領書などの証拠書類は一通りそろえておくようにしましょう。
プライベートとの重複部分はどうするか
個人事業主は会社から給与はもらわないので事業売上の一部を生活費として利用します。事業収入からプライベートに回すお金は「事業主貸」として仕訳します。当たり前のことですが、プライベートの生活費で発生する出費は事業経費として計上することはできません。あくまでプライベート用のものであって事業とは関係がないからです。
ただし事業主貸(生活費)と事業経費とが重なることもありますよね。例えば事業で使う車やスマホとプライベートで使う車やスマホが同じというケースでは、出費の中に公私が混同することになります。このようなケースではガソリン代や通信費の一部を経費として計上できますが、このように事業に使った分とプライベートで使った分とを分けることを「家事按分」と呼びます。
3.まとめ
必要経費枠を増やすことで課税対象となる額面は低くなります。ですから個人事業主は事業関連で出た出費をできるだけ漏れずに必要経費としてカウントするようにしましょう。税金やプライベートとの重複部分も含め、嘘や捏造にならない程度に入れられるものをすべて入れるようにします。
まとめると事業に関連する必要経費をできるだけ抑えるように努力しつつ、経費として発生した部分は余すところなくきっちり申告するということです。売上アップだけでなくこのような支出部分のお金の出入りを意識することも個人事業主の大切な役割です。